2026年 新海苔とれました

2025 11,30 初日


 先日、無事に初日をむかえることが出来ました。これはここ5~6年の間では最速の日付です。

 春頃に発表された「黒潮大蛇行の終息」は期待と不安でいっぱいでした。この黒潮はいわゆるあまり栄養のない潮流といわれており、東京湾の中まで入ってきてしまうと海苔の育ちが芳しくありませんでした。なので、この大蛇行が終わるというのは本当に大ニュースなのです。

 「まだ不安定です」という言葉に半信半疑でいながらも、期待しながら来たるシーズンに向けて、半年間の準備をしてきました。海苔網の洗浄、錨や綱や浮きのメンテナンス、種付け、イナヨシのめどりなおし、干出、有機酸処理、食害よけ網の設置、5枚から1枚への展開、1枚づつ食害よけ網の設置。そしていよいよ刈り取り、刈り取ったところの有機酸処理。次の刈り取りまで待っている間に、他の場所の刈り取りと有機酸処理。このサイクルが上手に回っていかないで海苔のベストタイミングを逃すと、おいしい海苔にはならなくなります。

 ポイントはその都度あり、一つ一つの工程が最終的な美味しい海苔に繋がってきます。そして、人が出来る事と海の成すところがあります。

種付けの時は海の栄養や阻害プランクトンとの闘い・気温や水温、海水の切れ具合など。そして干出の時は他の海よりも多いという珪藻との闘い・甘くするためのきっちりとした乾燥。この時くらいから水温が下がりきらないと魚がまだまだ旺盛なので、食害の対策が必要な年もあります。そこからは栄養塩と食害と、走水ならではの北風の吹いていない時間内に仕事が終わるように速さでタイミングを計りながら闘っていきます。

 網を張り替えるのも大変ですが、新芽2番、3番まで刈り取ったら張り替えていきます。走水は固くなりやすいので、よほどタイミングが合わないか、よほど良い海苔でなければ、4番以降は採りたくありません。採っても工場を回せば回すほど赤字という状況ではなく、3番4番でも出荷の値が良ければ話は別ですが。

 お米と同じ、単価が低いのが日常的で需要があるのも分かりますが、そうすると漁師が海苔の生産を辞めていき、地球環境も相まって生産量が減り、単価が上がっていきます。今はここの状況です。その次に予想されることは、生産量がこのまま下がる場合と通常まで戻る場合ですが、おそらく2026年生産量は例年の量まで上がっていくことでしょう。単価が下がるなら無理して4番を取る必要はなく、張り替え張り替えで大変ですが出来る限りやっていこうと思います。

 ちなみに生産量がもっと下がっていく場合、韓国などにシェアを取られ、国産の海苔の「最高級」しか売れなくなるという状況がすぐに目に浮かびます。そうしたら、東京湾の海苔なんておいしくても2番摘みも売れなくなっていくのでしょうか。安くないと売れず、また漁師が減っていきます。海苔とお米の課題はとても矛盾していて、そうこうしているうちに海外にシェアを取られていくという。そうならないように漁師ひとつひとつの経営体がブランド力をつけて、市場に左右され過ぎないよう安定した価格を維持していくことが重要です。

世界的な魚食ブームの次には、海藻ブームが来るはずなので、そこまでに基盤をつくっておき、どうにか生き残っていきたいと考えています。

 

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